(12)時の糸

 

 

~チャンミン~

 

「俺もいっただきまーす」

ユノは、もう一つの袋から続々と食べ物を取り出し始めた。

「えっ...これ全部ユノが食べるの?」

ユノの体型を見、ずらり並んだ食べ物を見、絶句してしまった。

「馬鹿もん!

んな訳ないだろ!

いろんな種類があって迷ったから、全種類買ってみたまでのことよ」

最後に缶入りのカクテルが出てきた。

「おっと、お前は飲んじゃいかんよ、風邪なんだから」

ユノは手を伸ばす僕の手を、ピシャリと叩いた。

「痛いよ、ユノ」

僕はがっかりして、ストロベリーヨーグルトを選ぶ。

 

仕方なさそうにヨーグルトを食べる僕を見て、

​「余った分は、明日のチャンミンの朝食だ」

「えー、残り物...」

「ままま、拗ねなさんな。

あー、うまい!」

ユノは唐揚げをかじって、カクテルで流し込んでと、美味しそうに消費していく。

​知らず知らず、ごくごくと飲むユノの白い喉から目が離せない。

「チャンミン」

ユノが僕から目をそらし、ヨーグルトをすくう僕のスプーンを見つめている。

「はい」

「さっきはごめんね。

その~、ブツを見ちゃって」

「うっ」

僕は30分前のハプニングを思い出して、一瞬でカーっと顔が熱くなる。

今度は、真面目な表情で僕を見た。

​「でも、見てないからな!」

「最初に『見た』って言ったじゃないか」

(こっぱずかしい姿を見られて...あぁ、あの時を消し去りたい)

​「だーかーらー、見たけど、見なかったことにしてやる、ってことよ」

(どうして、ユノはケロッと涼しい顔でいられるんだよ?)

ユノはカクテルを飲み終えて、ゼリー飲料のキャップを開けている。

「俺に記録されたメモリを消去してやった、って意味だよ」

​「意味わかんないよ」

「照れるな照れるな。

可愛いやつだなぁ、チャンミン」

​ユノはニヤニヤ笑っている。

「女の前で裸になるのなんて、何度もあるくせ...」

と言いかけて、ユノはパッと手で口を押さえた。

「おっ、もうこんな時間だ!」

​ユノはリストバンドを見て、勢いよく立ち上がると、

「そろそろ帰るね。

​ちゃんと薬飲んで、おりこうさんしてるんだぞ」

バッグを持って玄関の方へスタスタ行ってしまう。

​その間、僕は何も言えず、(多分)真っ赤な顔をして、床に座ったままだった。

「チャンミン」

玄関へ向かう廊下の角から、ユノは顔を出した。

「何?」

​「データがうまく消去できなくて、思い出すこともあるかも、ぐふふ」

「ちょっ、ユノ!」

わっはっはと笑いながら、「おやすみぃ」と言い残してユノは帰ってしまった。

(なんだよ、からかって)

​僕は頭を抱えて、髪をぐちゃぐちゃ混ぜる。

「はぁ...」

 

まったく、ため息ばかりついてる一日だった。

ハプニング続きで、頭がついていけないよ。

​はたと、大事なことを3つ思い出した。

その1

ユノにお礼を言うこと。

その2

ユノはどうやって、僕の部屋に入れたのか追及すること。

その3

​ユノから借りたマフラーを返すこと。

 

 

(つづく)

 

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(11)時の糸

 

 

~チャンミン~

「えっと...」

行き場を失った、僕の両手。

「えーっとね、ユノ?」

僕の背中に回された、ユノの両手を意識する。

ゆうべのようにひんやりとした手じゃない。

汗ばんで、熱い熱い手だった。

僕の喉はからからだった。

(参ったなぁ)

ユノは、僕の胸に顔を押し付けたまま、低い声でつぶやいている。

「...心配したんだから」

「あのさ、ユノ?」

「......」

ユノは僕の胸に頭を押し付けたまま動かない。

ユノに驚かされて、現状把握できずにいたけど...。

この状況は、かなり...かなり...恥ずかしい...。

僕はなんて格好をしてるんだ。

ユノの涙も止まったみたいだ。

 

「あのね、ユノ?」

「......」

 

「あのね」

 

僕は出来るだけ優しい声を意識して、ユノに話しかけた。

「僕...パンツを履いても...いいかな?」

「!」

ぴたっと、ユノの動きが止まった。

僕は、じっと彼の動きを見守っていた。

ユノは、そうっと腕をといた。

小さな声で「失礼しました」と言うと、ロボットのように回れ右をして、バスルームを出て行ったのであった。

(えっ?)

「はぁ...」

僕は深く深く、ため息をついた。

(びっくりしたー)

今日の僕はため息をついてばっかりだ。

​急展開過ぎて、追いつかないよ...。

湯上りだった身体も、すっかり冷えてしまった。

脇の下にひどく汗をかいていたようだ。

僕は下着をつけ、黒いスウェットパンツとTシャツを身に着けると、ユノを追った。

ユノの想像力が、ずいぶんとたくましいことを、ひとつ学習した僕だった。

 

 

 

 

「さあさあ、たんと召し上がれ」

 

ユノはビニール袋からどんどん取り出す。

 

ダイニングテーブルじゃなくて、ここがいいとユノが言うから、床に座って彼からの差し入れを食べることにした。

 

僕はあぐらをかいて、ユノと対面して座る。

 

「ねぇ、ユノ...。

セレクトが妙というか、変わってるというか、偏っているというか...」

 

「えっ?

どこが?」

 

ユノも床の上に胡坐をかいて座り込み、グラスにスポーツドリンクを注いで僕に手渡した。

 

「飽きたらいかんと思って、バリエーション豊かにしてみたんよ」

 

ゼリー飲料レモン味、ゼリー飲料マスカット味、ゼリー飲料ライチ味、ゼリー飲料アップル味。

 

(おいおい)

 

プレーンヨーグルト、ストロベリーヨーグルト、ブルーベリーヨーグルト、アロエヨーグルト、オレンジゼリー、ピーチゼリー、マスカットゼリー、アップルゼリー、コーヒーゼリー...各3個。

 

(おいおいおい)

 

「こいつら液体だからさ、めっちゃ重いのなんのって」

 

コラーゲンドリンク、プロテインドリンク、滋養強壮タウリン3000mgドリンク、ビタミンドリンク、マムシドリンク...。

 

(おいおいおいおい!)

 

「お前は風邪っぴきだろ?

冷たくてさっぱりしてて、消化がよくて、身体への吸収がよくて。

ビタミンが摂れるっていえば、これらしかないでしょ?

ユノさんの心遣いに、涙がでちゃうね、チャンミン?」

 

さっき大泣きしていたユノは、真っ赤に充血した目を三日月にしてにっこり笑った。

 

僕はどう反応したらよいかわからなかった。

 

嬉しさ反面、呆れていたし、ユノの極端なところに、どう反応したらよいかわからなかったのだ。

 

「......」

 

黙りこくっている僕の様子に、

 

「どうした、チャンミン?

頭が痛いのか、僕ちんは?」

 

ユノは僕の肩に手を添えて、僕の顔を覗き込んだ。

 

(まただ。

僕はこれに弱いみたいだ)

 

さっきの涙で目尻を赤く染め、目元がうんと幼い感じになっている。

 

「呆れてた」なんて言ったけど、実はじわじわと感激していた。

 

嬉しかった。

 

 

(つづく)

 

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(10)時の糸

 

 

~チャンミン~

 

 

髪だけ濡らすつもりだったけど、ついでだからと、シャワーを浴びることにした。

今日2回目のシャワーだ。

シャンプーボトルを手にして、しばし考える僕。

ごくごく普通の、どこででも買える安価なものだ。

ユノから香ったシトラスの香りを思い出す。

(あの香りは...シャンプー?

それとも香水だろうか?

いい匂いだったな...)

僕はシャンプーをたっぷり泡立てて、頭をごしごし洗った。

僕のシャンプーは、普通の石鹸の香り。

泡だらけの髪をすすいだ後、シャワールームを出た。

湯気で曇った鏡をタオルで拭くと、鏡に映る自分と目が合う。

髪はびしょ濡れで、上気した頬は熱いシャワーのおかげ。

(眉...目...鼻...口...)

顔のパーツをひとつひとつ、触れながら点検する。

こんなにまじまじと、自分の顔を観察するのは初めてだ。

​僕って、こんな顔してたっけ?

僕は29歳。

顔を右、左と向けてみる。

ごくごく普通の、顔。

両手を両頬に当てる。

29歳って、そこそこの年齢だよなぁ。

ん...?...29歳...?

 

途端、ぐらりと視界が回る奇妙な感覚に襲われた。

「あっ...」

シャンシャンと耳鳴りもする。

立ちくらみか?

視界がぐるりと回る。

洗面台に両手をついて、目をぎゅっと閉じて耐える。

はぁ...びっくりした。

1分後には、元に戻った。

何だったんだ、今のは?

 

「さてと」

​髪を乾かさないと。

​寝ぐせがついたら困るから。

壁にかけたドライヤーを手に取りコードをコンセントに刺す。

「ん?」

僕の背後の空気が、すぅっと動く感じがした。

 

 

 

悲鳴は同時だった。

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!」

「うわあぁぁぁぁっ!」

 

 

僕は自分でも驚くほどの大声を出していた。

 

こんな大声を出したのは、生まれて初めてかもしれない。

 

目をまん丸にして、尻もちをついているのは...ユノじゃないか!

 

ユノの視線が、僕の顔からゆっくり下りていく。

 

僕はハッと気づいた。

 

「わっ!」

 

大急ぎで僕は、タオルで下を隠す。

 

ユノは僕に視線をロックオンしたまま、固まっている。

 

(見えた...よな?)

 

なんて間抜けな姿してるんだ、僕は。

 

尻もちをついた姿勢から、ゆっくりと立ち上がった。

 

(は、恥ずかしい...!)

 

ぐんぐんと全身が熱くなってきたのが分かる。

 

「あっちへ行って...」と言いかけたその時。

 

ドスンと、僕に突進してぶつかる衝撃。

 

「!」

 

ユノが僕に体当たりするかのように、抱きついてきたのだ。

 

ユノは僕の首を絞めんばかりに、腕を強く巻き付けている。

 

「えっ...」

 

濡れた僕の体に、ユノの乾いた洋服が押しつけられているのがわかる。

 

「あの...」

 

(困った、困ったぞ...)

 

さらにぎゅうっと、ユノの腕の力が増す。

 

「く...」

 

息ができない...。

 

「く、苦しい...」

 

僕のものを隠していたタオルがポトリと落ちる。

 

「......」

 

ユノは黙ったまま、僕にかじりついたままだ。

 

「ぼ...」

 

たまらなくなって、ユノの両肩を持って引きはがした。

 

「ぼ、僕を締め殺す気か!?」

 

え...?

 

驚いた。

 

僕に両肩をつかまれたままの、30センチの距離のユノが泣いていた。

 

泣きながら、僕を睨んでいる。

 

「ば、馬鹿者―!」

 

ユノが大きな声を出すから、驚いて僕は彼の肩をつかんだ手を離してしまった。

 

ユノの充血した目から、ボロボロと大粒の涙が落ちてきた。

 

「ユノさんに心配かけさせやがって...。

めちゃくちゃ、心配したんだぞー!」

 

「!!」

 

今度は、ユノは僕の胸にしがみついてきた。

 

えっ.....?

 

「うわーーん」

 

大泣きしだした。

 

「ホントに、心配したんだぞ!」

 

「......」

 

「もう、死んじゃったかと思ったんだぞ!」

 

「は?」

 

僕が、死ぬ...?

 

「えっ...と、僕はただ、シャワーを浴びていて」

 

ユノが何を言っているのか、さっぱり理解できなかった。

 

どこでどう繋がると、僕が死んじゃうことになるんだ?

 

ユノの熱い涙が、僕の胸を濡らしている感触がよくわかる。

 

次から次へと、流れている。

 

一体全体、この状況はなんなんだ?

 

「お見舞いに来たのに、チャンミンは出てこないし...っく...。

倒れたままなんじゃないかと思って。

昨日、具合が悪かったし。

うっく...っく...。

だから、うちの中探し回ったのに...。

チャンミン、どこにもいないし。

ひっく...風呂場で死んでるんじゃないかと思って」

 

そういうことか...。

 

ずずーっと鼻をすする音。

 

きっと僕の胸は、ユノの涙と鼻水でベタベタだ。

 

僕の頬に、ユノのショートヘアがさわさわと触れている。

 

また、シトラスの香りがした。

 

参ったなぁ...。

 

なんだか...もう...たまらない気持ちになった。

 

 

(つづく)

 

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(9)時の糸

 

 

「非常時だから、許されるハズ」

リストバンドをドアノブ下のプレートに当て、リストバンドとPCをケーブルで繋いだ。

(落ち着け~、落ち着け~)

ユノは焦って震える手​にイライラしながら、キーボードを打つ。

「よし!」

最後のキーをタップすると、カチッと音がして、プレートに灯ったランプの色がグリーンに変わった。

「開いた!」

​(今からユノさんが、助けに行くからな!)

ユノはドアノブのレバーを押し下げ、部屋の中にするりと入った。

 

 

 

「チャンミーン!」

ユノは大声で叫ぶ。

玄関から突き当りのリビングの照明はついている。

 

チャンミンはいない。

ソファの陰にチャンミンが転がっているかも...と恐る恐るのぞく。

(いない!)

​「チャンミーン!」

(隣の部屋か?)

リビングに向かって右手にあるドアが半開きだった。

部屋が暗くて様子がわからないが、どうやら寝室らしい。

「わっ!」

(ベッドの下の、あの長い塊は............チャン...ミン?)

(まさか!)

血の気がひくユノ。

​「チャンミン!」

(どうか息がありますように!)

ユノは揺さぶろうと、勢いよく手を伸ばした。

「チャンミ.....。

.........ったく、布団かよっ!」

ユノは苛立ちのあまり、つかんだ布団を殴り捨てた。

「チャンミンの馬鹿!」

(チャンミン...頼む!

生きてて...!)

心配で心配で、ユノの胸はハラハラドキドキ、苦しかった。

ユノの顔は、もはや半泣き状態だった。

「チャンミーン!」

(どこで倒れてるんだ、あいつは?)

「かくれんぼしてんじゃねーぞー!」

リビングに戻り、真向いにドアが2つ。

(どちらかが、トイレ。

トイレで倒れる人って多い、とよく聞く話だよな)

ユノの頭に、トイレに腰かけたままぐったり壁に寄りかかるチャンミンの姿が浮かぶ。

ユノはゆっくりとドアレバーを回し、ドアを引く。

 

「チャ.....。

 

 

......って、いないじゃんか!」

白いタイルがまぶしい、清潔そうなトイレは、無人。

(ったくもー!

びっくりさせやがって!

ほっとするやら、ドキドキするやら!)

かけられた黒色のタオルに、

(おっ!センスいいじゃん。

って......感心してる場合じゃない)

「チャンミーン!!」

(残るドアはあと一つ...バスルームだ。

出しっぱなしのシャワーのお湯に打たれて、床に倒れたチャンミン。

若しくは、バスタブに浸かった状態で、だらりと手をバスタブから出してて...!)

「チャンミーン!」​

​(頼む!

無事でいて!)

「生きてるか!?」

ユノは、勢いよくドアを引く...。

「ひぃっ」

​​

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

​ユノは腹の底から、悲鳴を上げたのだった。

 

 

(つづく)

 

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(8)時の糸

 

 

~ユノ~

 

 

俺は艶消しアルミのドアの前に立っていた。

 

廊下は薄暗く照明されていて、同じデザインのドアが左右に同じ間隔をとって並んでいる。

ここは、高層マンションの18階。

 

ドアチャイムのボタンを押す。

仕事終わりに、チャンミンのお見舞いに行くことを思いついたのだった。

 

この言い方は、正確じゃないな。

 

今朝チャンミンと別れた時点から、行く気まんまんだった。

 

​早く仕事が終わらないかなぁ、とチャンミンのお見舞いを楽しみにしていたのだ。

自宅まで訪ねていったら、おかしいかな?

 

ギリギリまで迷っていたけど、ぼんやりしてるチャンミンのことだ。

 

​いちいち頓着せんだろう。

​ドキドキ...。

なんか、緊張するな...。

 

おいおい、何緊張してるんだ?

 

どうしちゃったんだ、俺?

 

ビニール袋が手に食い込んで痛い。

くそ~、重い!

 

手がちぎれる。

 

ちょっと買いすぎたな、こりゃ。

 

「ん?」

あれ?

ドアは開かない。

 

トイレにでも行ってるんかな。

ドア右のディスプレイには、「在宅中」のサインが点灯しているから、留守ではないのは確実。

もう一回、チャイムのボタンを押す。

​​

気密性が高いから、中でチャイムが鳴っているかどうかまでは分からない。

​​

「......」

​​

長いトイレだ。

風邪だったし、腹でも壊してんのかな。

「......」

電話をかけようか...?

​​

リストバンドを操作しかけて、俺ははたと気づく。

「あっ!!」

くそ~。

​​

チャンミンの電話番号、知らんかった。

​​

「ったく」

​​

5回連続でボタンを押す。

​​

「......」

​​

まだ、ドアは開かない。

​​

「......」

 

 


 

「ユノ!」

 

ドアの向こうから、驚いた顔のチャンミンが顔を出す。

 

「大丈夫かなぁ、と思って、お見舞いにきたんだ」

 

買い物袋を持ち上げてみせて、にっこり。

 

「わざわざ、いいのに...中入って」

「おじゃましまーす」

 

チャンミンの部屋に入れてもらう俺。

 

独身男性の一人暮らしの部屋だなんて、なんだか緊張するぞ。

ニヤニヤするのを我慢する。

「口に合うかわからないけど」

「ありがとう。一緒に食べる?」

「いいの?」

「一人で食べても寂しいし」

「さすがチャンミン。きれいにしてるね、部屋」

「まあね。

座ってよ。お茶を淹れるから」

チャンミンはお湯を沸かしに、キッチンへ。

俺は、リビングのソファに座って...。

とか、とか!

 

​あれこれ予行演習してたのに!

 

予定が狂ったじゃないか!

​​

 


 

回れ右して帰る訳にはいかない。

 

大量に買ってきたこいつらを、チャンミンに直接渡せないまま帰るなんて絶対にヤダ。

もう一回、チャイムを鳴らす。

しーん。

...ちょっと待て...よ?

​​

まさか!

 

まさかのまさかだけど!

チャンミン..倒れてるんじゃ...ないよね...?

俺の脳裏に、床にごろりとうつぶせで倒れているチャンミンの姿が浮かぶ。

「えぇ~!」

​「どうしよ、どうしよ!」

​「チャンミーン!」

大声で叫んで、ドアを叩いたが、無駄だと気づいた。

​「馬鹿か、俺は!」

​​

​中に聞こえる訳ないじゃん。

どうしよ、どうしよ!

悶死しないでくれ、チャンミン!

俺のたくましい想像力は、喉をかきむしって、もがき苦しむチャンミンを見せる。

​しばし考えた末、

​「非常手段をとるしかないな...!」​​

 

 

(つづく)

 

 

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