(31)あなたのものになりたい

 

 

~ユノ~

 

チャンミンに語りかける過程で見つけた答えだ。

 

「一緒に暮らしたかったからお前を買った」

 

チャンミンを残して先に店を出た。

 

俺を追ってくるチャンミンを期待していた。

 

ついに本心を見つけることができた。

 

 

足腰がガタガタなチャンミンの為に、マンションまでの帰り道もタクシー使った。

 

ドライバーの目を気にすることなく、チャンミンは俺の肩にもたれかかった。

 

チャンミンの膝の上で、互いの指と指とを絡めた。

 

反対側の手で、チャンミンは首元をいじっている。

 

首輪が必要なくなって数カ月が経過した。

 

青いチョーカーが、チャンミンのほっそりと長い首を飾っている。

 

今も消えずに残る痕...茶色い色素沈着の輪を覆い隠してくれる。

 

チャンミンは『犬』である証の首輪...主従関係の見せしめに...硬い牛革製の首輪を...をどれだけの期間、装着してきたのだろう?

 

チャンミンに一度訊ねてみたい質問だった。

 

チャンミンは指先でチョーカーのチャームを揺らしている。

 

そのチャームは単なる飾りではなく、俺に万が一のことがあった時のための備えになっている。

 

チャンミンが当面の間、暮らしに困らないだけの価値がある。

 

チャンミンの髪がふわふわと俺の頬をくすぐっている。

 

チャームの次に、チャンミンは繋いだ俺の手をいじりはじめた。

 

絡んだ指の1本1本を曲げたり伸ばしたり、こそこそと手の甲をくすぐったり...子供っぽい仕草に「ふっ」と笑みの吐息が漏れた。

 

「お兄さん」

 

「ん?」

 

上目遣いのチャンミンと見つめ合う。

 

「...なんでもないです」

 

「?」

 

「呼んでみただけです」

 

チャンミンは視線を伏せてしまい、俺の手をいじる動作に戻ってしまった。

 

チャンミンの耳はみるみるうちに赤くなってゆく。

 

その分かりやすい変化を目の当たりにして、彼を愛しく想う感情で溢れそうになった。

 

「舐めてもいいですか?」

 

「...えっ!?」

 

「...指、舐めても...いいですか?」

 

チャンミンに指をしゃぶられた夏のはじめ、河川敷の散歩の日を思い出した。

 

温かく柔らかな舌が、指の股をちろちろとくすぐった後、ねっとり指先へと這っていく。

 

まるでアレするように俺の指をうまそうに、しゃぶっていた。

 

2度も射精したばかりだというのに、当時の感触を思い出すだけで股間の緊張が高まっていく。

 

「舐めたいけど...タクシーの中だから、駄目ですよね」

 

まったく、この男は...俺を誘うのが上手い。

 

「まだ足りないの?」と、チャンミンの耳元に吐息多めで囁いた。

 

チャンミンの顎がぶるっと震えた。

 

「......」

 

ごくり、と喉仏が上下した。

 

分かりやすい反応だった。

 

快楽にどん欲なところ...それを隠そうとしないところがこの男の魅力のひとつだ。

 

「チャンミンの中...俺のが漏れそうなんだろ?

もっと欲しいのか?」

 

「......」

 

「いらないんだ?」

 

「...欲しいです」

 

「素直でよろしい」

 

チャンミンの額に唇を押し当てた。

 

ドライバーと一瞬、バックミラー越しに目が合い、にっこり笑って見せると彼は慌てて目を反らした。

 

絡めたチャンミンの指が白くなるまで握る力を込めると、それに応えて彼も握り返した。

 

 


 

~チャンミン~

 

ベッドの上でのエッチに飽きた僕らは、家じゅうのありとあらゆる場所で身体を重ね合った。

 

その中で凄かったのは、ダイニングテーブルの上に乗っかって、お尻を突き出してしゃがむんだ。

 

ものすごく恥ずかしい恰好だ。

 

ご飯を食べるところに上って、裸ん坊になってエッチなことをするなんて、とても行儀が悪いことだ。

 

お兄さんは行儀に厳しい人。

 

長年の癖で、食事とは早い者勝ちで、ガツガツ犬食いだった僕は、何度注意されたことか。

 

それなのに、エッチの時はOKなんだ。

 

エッチの時は何でもOKにしちゃうお兄さんが、僕は大好きだ。

 

ブラインドを開け放った窓ガラスに、恥ずかしいことをしている僕らが映っている。

 

テーブルの端をつかみ、落ちないよう両脚を踏ん張った。

 

頭のてっぺんまで、超気持ちいい電流が突き抜けた。

 

 

野に放たれた『犬』たちは、自由をオーカしているのか?

 

僕ら『犬』たちは、野良にはなれない。

 

そのことをお兄さんはよく知っている。

 

お兄さんは考え過ぎる人だから悩んでいると思う。

 

普通の人がやったらギゼンだって、僕はお兄さんを責めていた。

 

僕ら二人ともが元『犬』同士でよかったと思うのが、こういう時だ。

 

あれは同情でしたことじゃない。

 

僕の為だったんだ。

 

ただそれだけ。

 

僕にはよ~く、分かっている。

 

 

(つづく)

 

 

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(30)あなたのものになりたい

 

 

~ユノ~

 

果てた後の数十秒、俺たちは抱きしめ合ったまま静止していた。

 

仰向け寝のチャンミンは、俺の腰に両足をぶら下がらんばかりに絡めたまま、俺は彼の頭を胸にかき抱いていた。

 

互いの吐息、呻きと喘ぎしか聞き取っていなかった俺の耳は正常に戻る。

 

空調も作動していない地下の一室は、しんと静まり返っている。

 

「...起き上がれるか?」

 

身体を起こそうとするチャンミンの腕を引っ張ってやる。

 

「はい...あっ!」

 

チャンミンは床に足がつくなり、体勢を崩してしまったのは、今さっきの行為で腰が抜けたせいだ。

 

「おかしいですね?

足が...フラフラです。

あははは...運動不足なのかな?」

 

首を傾げて照れ笑いをするチャンミンが可愛らしくて、タックルするように引き寄た頭を、くしゃくしゃと撫ぜた。

 

「お兄さんったら...僕を犬みたいに撫ぜるんですから」

 

チャンミンと出会った時から感心していることがある。

 

チャンミンの口から出る『犬』というワードには一切、意味深さがないのだ。

 

確かに『犬』であったことを卑下したり、恥だと感じていることは、言葉の端々から伝わってくる。

 

もっとも、チャンミンの心情をわざわざ想像しなくても、俺たちの過去は黒歴史、消し去りたいものだ。

 

俺とチャンミンとでは、『犬』時代の捉え方が大きく異なっている。

 

チャンミンは過去や現在を問わず、自分を取り巻く状況や立場をありのままに、素直に受け入れるタイプだ。

 

だから、『犬』のワードに気色ばんだりせず、そのままの意味で「犬みたいに撫ぜるんですから」なんて台詞が言えるのだ。

 

もし俺だったら...俺の過去を全く知らない者であってもいい思いはしないし、知っている者だったら尚更、俺を揶揄しているのか?貶めるのか?と気色ばんだ反応を見せていただろう。

 

 

足元おぼつかないチャンミンに肩を貸し、地上への階段をのぼった。

 

今日のセックスは場所がいけなかった...大いに煽られた。

 

結果、加減を見失って攻め立ててしまい、チャンミンにはかなり無理をさせたかもしれない。

 

「辛いか?」

 

「平気です。

僕のあそこは頑丈にできていますから」

 

ほら、まただ。

 

これまで何度、過去を匂わせる台詞をたしなめてきたことか。

 

ところがチャンミンを深く知っていくうち、これらの台詞には僻みの気持ちは一切ないことが分かってきた。

 

この素直さがチャンミンを守り、精神を病むことなく俺の隣で無邪気な笑顔を見せてくれている。

 

このあたりの機微を読み取れるようになった俺は、いかに日頃からチャンミンを見つめてきたのか、自分でも驚いてしまうのだ。

 

 

チャンミンの身体は汗だけじゃなく、自身が放ったものでべたついていた。

 

ボイラーを切ってあるため、あいにくシャワールームは使えない。

 

着替えるチャンミンを待つ間、俺は店内をぶらついていた。

 

「お兄さん」とチャンミンに呼ばれ、「大丈夫か?」と俺は彼の元に駆け寄った。

 

なぜなら、下着に足を通そうと身をかがめた姿勢で静止していたからだ。

 

ところが、「ここ...みてください」とチャンミンの指が指し示す箇所に俺は苦笑した。

 

「お尻の力を入れていないと...ほら、出てきちゃいます」

 

濃厚で刺激的なセックスの十数分後には、今のような際どい台詞でもう一度俺を煽るのだ。

 

俺はチャンミンの尻を、ひたひた軽く叩いた。

 

「家に帰ったらかき出してやるからな」

 

「じゃあ、頑張って力をいれておきます」

 

チャンミンとは、俺を全身で慕う純朴な犬であり、俺をドギマギさせる小悪魔でもあるのだ。

 

 

帰りのタクシーの中で、俺はチャンミンに語っていた。

 

「あの店の『犬』たちに...俺は恨まれているだろうね。

あの店にいれば衣食住は保証されていたのに、俺は世間をろくに知らない、帰る家もない彼らを、野に放した。

以前、似たような会話をしたね...ありがた迷惑だって。

だから、恨まれた結果、何かが起こっても仕方ないと覚悟はしているよ。

心配しなくて大丈夫だ、怖い顔をしないで。

十分すぎる保証はしたから」

 

「...それなら、いいですけど」

 

「俺は店も『犬』も全部、所有した。

囚われの身でいることを、憐れんでしまった俺のエゴが招いたことだ。

エゴだらけだ、俺のすることは...」

 

「...エゴ」

 

「そうだ。

エゴというのは...自分のことが偉いと思う気持ちを意味する。

そしてね、俺がやったことははた目から見ると、偽善に満ちているんだ。

チャンミンを自由にしてやりたかったから買い取った。

それよりもっと大きな動機があるんだよ」

 

「...それは?」

 

「チャンミンを守ってやりたい、と思ったんだ。

どうしてか、って?

あの夜のチャンミンは俺の目には、弱弱しく映っていたんだ。

中指立ててたのに、だぞ?

でも、チャンミンと暮らすうち、『守ってやる』という表現は正確じゃないと気付いた」

 

「教えてください。

僕が喜ぶことですよね?」

 

「そうだ。

ほら、今、笑っているだろ?

俺がチャンミンのために何かした時。

お前の反応を見るのが楽しみなんだ」

 

「気に入らなくて、不貞腐れたり怒ったりしたじゃないですか?

お兄さん、お節介焼きだし、ありがた迷惑なことするし...」

 

「笑ってくれるに越したことはないけれど...チャンミンのリアクションの全てが面白い。

チャンミンをお買取りしたのは、それが理由だ。

お前のいろんな表情を見たかった。

...一緒に暮らしたかったんだ」

 

「ふんだ。

僕を置いて出て行ったくせに」

 

「それは...恥ずかしかったからだよ」

 

「なんですか、それ?」

 

 

(つづく)

 

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(29)あなたのものになりたい

 

~チャンミン~

 

二度と足を踏み入れたくない憎むべき場所のはずなのに、いざ来てみると案外平気でびっくりした。

 

お兄さんのおちんちんが、家でのえっちの時よりパンパンになっていて、とても興奮しているのが分かって、僕は嬉しかった。

 

お兄さんは僕よりも繊細で優しい心の持ち主だけど、さすが『元犬』。

 

トラウマがどうのこうのと、こだわるものが多くては『犬』は続けてこられなかった。

 

「いいか?」

 

「いい、いいっ...」

 

床に立ったままのお兄さんは、ベッドに寝っ転がった僕の肩をひっつかんでいる。

 

最高に感じまくっている僕の身体。

 

コリコリに勃ったおっぱいの先が、お兄さんのポロシャツに擦れる感触だけで、えっちな声が漏れてしまった。

 

カエルみたいに開いた太ももに、人の関節の可動域の広さに驚いた...なあんて、真っ最中に関節がどうのなんて気にもしていない。

 

繋がったところをお兄さんに見てもらいたくて、両尻を左右に開いていた。

 

「今日のチャンミンは凄いね。

ここが『犬』の店だから興奮しちゃったのかな?」

 

お兄さんは身をかがめると、鼻のてっぺん同士をくっつけた。

 

「ここは大嫌いな場所なんだろう?

どスケベなチャンミンは、俺に『犬』みたいにヤられて興奮してるんだろう?」

 

お兄さんの汗が滴り落ちてきて、眼に沁みてまばたきしていると、彼にまぶたごと舐められた。

 

恥ずかしいことが好きな僕をお兄さんは知っている。

 

ギラギラ輝くお兄さんの眼はわずか数センチ先。

 

射竦められて、僕は呼吸を忘れてしまう。

 

素直に認めるしかなくなる。

 

「...はい」

 

僕の答えに満足した風のお兄さんは、僕のお尻からおちんちんを抜いてしまった。

 

「...えっ...ちょっと...やだ...」

 

お尻が寂しくなって泣きそうになっていると、お兄さんが洋服を脱いでいるところだった。

 

腕をクロスさせてシャツを脱いでいた。

 

筋肉と骨、すべすべの白い肌。

 

何度見ても惚れ惚れとしてしまう美しい身体だ。

 

僕は女の人とえっちをしたことはないけれど、えっちをしている女の人を近くで見たことはある。

(前のショユーシャは、僕と女の人を並べてえっちをすることが好きな人だったんだ)

 

お兄さんとえっちをしている時の僕は、女の人みたいになっていると思う。

 

お兄さんみたいに逞しくて美しい人の下になる悦びで、いっぱいになるんだ。

 

お兄さんはベッドに上がると、僕を後ろから横抱きにした。

 

僕の片脚は持ち上げられ、心得ている僕はその膝を支えた。

 

「...んぐっ」

 

後ろから貫かれ、深いため息を漏らしてしまう。

 

ベッドから突き落とされないよう、ベッドのへりを掴んでいた。

 

この眺め...窓のない部屋、天井の隅に監視カメラの赤いランプ、シャワールームのドア、壁のフックにぶら下がる鎖と革紐。

 

客に揺さぶられながら、何度この光景を眺めたことか。

 

当時の僕と今の僕は、天と地ほど違う。

 

過去に思いを馳せていたせいで、油断していた。

 

「ああぁっ...ん!」

 

突然、頭のてっぺんまで貫く快感に、悲鳴をあげた。

 

ここで一度、イってしまったらしい。

 

僕は再び仰向けに転がされ、お兄さんは僕の上にもたれかかって体重をかけた。

 

お兄さんに扱われると、僕の身体はぐにゃぐにゃに柔らかくなり、簡単に二つ折りにされるのだ。

 

「...ああっ...いいっ、いいっ...!」

 

その大きくなったモノで激しく出し入れされたり、ぐるぐるかき混ぜられて、お腹の中が苦しい。

 

『犬』だった頃、しんと醒めた頭で、白けた気分で見上げていた天井の空調ダクト。

 

このビニール張りのベッドの上で、フリじゃなく、初めて真の喘ぎ声を上げていた。

 

「いぐ...いいっ...いいっ...いっ、いいっ...いいっ」

 

お兄さんの鼻息が荒くなってきた。

 

数か月前のことだ。

 

僕はお兄さんに買われ、この部屋で、このベッドで、『犬』として彼に抱かれた。

 

『犬』と客だった僕らは恋人同士となって、同じベッドで身体を重ねている。

 

「チャンミンはもう『犬』じゃない。

俺と対等なんだ」

 

何度もお兄さんから言われていた。

 

その言葉は、僕の意識の上っ面をかするだけだった。

 

実感が伴っていなかったのだ。

 

でも、こうして繋がり直しているうち、過去がセーサンされたような感覚に襲われた。

 

僕は無知で頭が悪いから、お兄さんの言葉がすぐには理解できない。

 

ねえお兄さん。

 

僕が理解できるまで、何度も繰り返して。

 

僕といっぱい、えっちして。

 

いっぱいいっぱいえっちをしているうちに、僕は確かに求められていると自信がつくから。

 

今はまだ、いつか僕の手を離してしまうんじゃないかって、怖いんだ。

 

誰かのショユーブツになることは、窮屈だろうけど、捨てられたらどうしようと怖くなるものなんだね。

 

 

ガクガクにシェイクされて、頭がおかしくなっているところに、おちんちんの首で僕の弱いところを重点的に刺激される。

 

一方的に集中的に与えられる快感に耐えきれなくて、身体を起こそうとしたけれど、お兄さんに肩を押さえつけられてしまう。

 

僕らにとってこの体位こそが、相性抜群な繋がり方なのだ。

 

数えきれないほどの客に、中を掘られてきた僕だ。

 

それでも、あのスポットに到達し刺激することができた客は、片手もいない。

 

長ければいいってものじゃない。

 

僕自身がリラックスしていないといけないし、上になる側も奥深く到達できる角度をつかむセンスが必要だ。

 

要は相性。

 

そこは秘部。

 

激痛に涙が浮かんだ。

 

お兄さんのおちんちんの先っぽが、とんでもなく深いところを突いている。

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(28)あなたのものになりたい

 

 

~チャンミン~

 

レジカウンターの脇のドアを開けてすぐに、地下へと下りる階段がある。

 

お兄さんは「狭いな」とつぶやき僕を床に下ろした。

 

僕を横抱きにしていたら、階段の壁に僕の足がぶつかってしまうからだ。

 

僕はお兄さんに手をひかれて、埃だらけの階段を裸足でぺたぺた下りていった。

 

裸ん坊の自分が心もとなくて、半勃ちのおちんちんを手の平で覆い隠した。

 

裸が平気だったのに、今日の僕は恥ずかしがり屋になってしまった。

 

仕事部屋へと続くこの階段、かつての僕は1ステップごとに、心の中を空っぽにしていったんだ。

 

そこまでの十数メートルを、客の大半は『犬』にリードをつけることを好む。

 

リードの扱い方を見れば、その客がどんなプレイを好むのか前もって分かるのだ。

(粗野な客に、ひと晩どころか1週間レンタルされた時には、心を消してはいても辛いものがあった)

 

強く引っ張られ過ぎて、ステップを踏み外したことも多々あったなぁ、と思い出していたら、

「危ない!」

僕の腰はお兄さんに抱きとめられた。

 

「...辛いのか?」

 

僕を心配する声はとても優しいのに、えっちな目をしている。

 

僕は首をぶんぶん振って、「平気です。懐かしいなぁ、って思ってただけです」と答えた。

 

トラウマのあまり呼吸困難に陥り、その場にしゃがみ込んでしまい、真っ青な顔してぶるぶる震える...テレビで見たことがあるシーンは、僕には全然当てはまらない。

 

僕はタフに出来ている。

 

だから、お兄さんを安心させようと、強がって言ったものじゃないんだ。

 

屋外は残暑厳しい汗ばむ気候なのに、地下のここは冷え冷えとして、僕のおっぱいの先が固く縮こまっている。

 

幾度かお兄さんの視線が、僕のそこに止まった。

 

お兄さんは乾いた下唇を、赤い舌で湿した。

 

お兄さんの唇で温めて、舌で転がして欲しい。

 

僕はごくり、と唾を飲みこんだ。

 

舐めて吸って、噛んで欲しい!

 

おちんちんが膨らんで、僕の手の平の下で窮屈そうにしている。

 

ドアは開け放たれた状態だった。

 

壁は防水防汚加工されたビニールクロス貼りで、メインのベッドもビニール製だ。

 

客が入れ替わるごとに入念に消毒し続けたせいで、塩素の匂いが染みついている。

 

生臭い匂いがするよりはマシだ。

 

「...あ」

 

間口に立ち尽くし考え事にふける僕は、軽々とお兄さんに抱きあげられた。

 

その上にもろくて壊れやすいものを扱うかのように、恭しく下ろされて、僕は仰向けに横たわった。

 

腰を浮かせて、開いた両膝はお腹に引き付けた。

 

僕は中指と薬指によだれをたっぷり、まとわせた。

 

お兄さんと目を合わせたまま、その指をお尻の穴へと這わせ、ゆっくりと突き刺した。

 

「は...はぁ...あっ...」

 

さっきまでお兄さんになぶられていたため、柔らかく緩んでほぐす必要はなかった。

 

どん欲に口を開けたそこを、よく見てもらえるように、左右に割った。

 

お気に入りの箇所を指の腹でこすると、「んふっ」と思わず出た甲高い声に、自分でもびっくりする。

 

僕とお兄さんは目を合わせたままだから、僕の指がアソコをどうイタズラしているのか、お兄さんは見ることができない。

 

「...は...あぁ...あ...」

 

お兄さんが見たいのは僕の表情なんだ。

 

えっちなことをして、えっちな声を出す僕を見たいんだ。

 

「挿れて...?」

 

お兄さんの眼がウルウルとしてきたけれど、これは涙ぐんだものじゃない。

 

高熱の人の眼だ。

 

熱病にやられて、僕のことが欲しい欲しいって、狂いかけている人の眼だ。

 

お兄さんは唇の合わせをちろりと舐めた。

 

舌なめずりする虎のようで、ぞくり、とした。

 

「早く...挿れて。

お兄さんの...挿れて?」

 

僕はこれから、この人に食べられる。

 

お兄さんは僕と目を合わせたまま、ズボンと下着をずらしている。

 

「んっ」

 

僕の入り口にあてがわれた、弾力のある温かいもの。

 

お兄さんと目を合わせたまま、僕はそれを飲み込んでいく。

 

お兄さんのおちんちんが欲しくてたまらない僕の内臓。

 

本来の役割を忘れて、中へ奥へと送り込む

 

 

「んっ...ふっ...お、大きい...」

 

「なあ、チャンミン」

 

ずん、と衝撃についで、お尻の奥から強烈な痺れが弾けた。

 

弾けたのちに、全身の力が抜ける。

 

「ひゃ...あっ...あん...っあ」

 

数度、腰を叩きつけると、ぴたりと動きを止めて僕に囁きかける。

 

「思い出したか?」

 

低く、男らしい声だ。

 

「...?」

 

「客に抱かれている時も、そんな声を出していたのか?」

 

ずくずくと数度突いては、僕の反応を確かめる。

 

「あああぁん...!」

 

「いい反応だ。

さすが売れっ子だ」

 

お兄さんの手が僕のお尻へ振り下ろされ、バチンと見事な破裂音が室内に鳴り響いた。

 

「ちがっ...違うよ」

 

「へえ...じゃあ、これは?」

 

と、唇の片端をクイと上げいやったらしく笑って、深く貫いたまま左右に僕を揺さぶった。

 

「ああぁっ...いい、いいっ...!」

 

僕の上にのしかかるお兄さんにしがみつこうと、伸ばした両腕は払いのけられた。

 

「お前は尻を広げていろ」

 

手首をつかまれ、自身のお尻にあてがわれた。

 

数えきれない数のお客をイカせてきたこのベッドで、僕はお兄さんに抱かれている。

 

僕らはとても悪いことをしている。

 

今も昔もここは、衛生的な匂いがする。

 

叩きつけられる腰の力を、僕は商売道具だったアソコで受け止める。

 

『元犬』が『犬』だった場所で抱き合っている。

 

トーサク的だね。

 

 

(つづく)

 

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(27)あなたのものになりたい

 

 

~チャンミン~

 

 

お兄さんの舌が僕の中で踊っている。

 

「汚いから...やめて」

 

僕は前かがみになって、お尻を突き出している。

 

「...あっ...や...はぁ...」

 

汚い床に片膝をつき、お兄さんは僕のお尻に顔面を埋めている。

 

「やめて」

 

お兄さんのよだれが僕の内ももを濡らしている。

 

自分から誘っておいて...外で...それも『犬』の店で、お兄さんとえっちする流れになるなんて予想していなかった。

 

お兄さんの苦し気な表情をほぐしてやりたかったんだ。

 

この方法しか思いつかなくて...だから、こうなった。

 

僕ら2人きりの建物の中ではあるけれど、よりによって『ここ』

 

僕らが『犬』をやっていた、懐かしの場所。

 

とても悪くて恥ずかしいことを、僕らはしている。

 

あそこに吸い付く音、よだれの音...。

 

恥ずかしいけれど、気持ちがいい。

 

お兄さんの綺麗な顔を、僕のものが汚している。

 

いけないことだと思う程に、前も後ろも感覚が敏感になってゆく。

 

僕はお辞儀をしている格好になっているせいで、元気になったおちんちんの先が、顔のすぐ前で揺れているんだ。

 

ぺろぺろ舐められたり、吸われたり、粘膜同士の感触を味わっていると...

 

「ああぁっ!」

 

突如、足の指まで電流が走り、僕は叫んでしまう。

 

「っう...くぅっ...」

 

両膝をつかんで、崩れ落ちるのを必死で堪えた。

 

「やっぱり...チャンミンは『ここ』が好きなんだ?」

 

「...はい」

 

後ろを振り向くと、口の周りをベタベタにしたお兄さんがにたり、とえっちな顔をして笑っていた。

 

「駄目だから、お兄さん。

汚いから...ダメ」

 

お兄さんは僕の「止めて」なんて本気にしていない。

 

僕のそこから口を離すと「そうだね、汚いね」って、お兄さんはにたにた笑った。

 

「チャンミンの汚いところを、俺は舐めているわけだ」

 

「!」

 

かあぁぁっと全身の表面が熱くなった。

 

たまらなくなった僕は、腰を引いてお兄さんから逃れようとしたけれど、ウエストをさらわれていてそれも出来なかった。

 

「脱げ」

 

耳元で命じられた。

 

「尻だけ出していないで...全部、脱げ」

 

僕は立ち上がった。

 

「脱げ」

 

Tシャツと、膝のあたりで引っかかっていたズボンとパンツを、脱ぎ捨てた。

 

お兄さんは転がっていたスツールを立たせると、そこに腰掛けた。

 

組んだ足に頬杖をついて、僕の姿をじろじろと見た。

 

「...っ」

 

裸は慣れているはずなのに...。

 

今日の僕の身体は、酷くみっともないものに思われた。

 

多分、場所のせいだ。

 

当時は商品に値するだけの、完璧に搾り上げた身体をしていた。

 

商品じゃなくなった今、シューチシンが芽生えた。

 

日頃、お兄さんに愛されているこの身体に、もっと自信を持っていいのだろうけどね。

 

『犬』時代と比べると、余分な贅肉を身にまとっているのは確かだ。

 

今すぐ、床に落ちた服でいいから、せめておちんちんだけでも隠したい。

 

お兄さんは何も言わず、僕を見るだけだ。

 

恥ずかしいと思うほどに、僕のおちんちんは固くなっていく。

 

足の付け根に力を入れると、ぷらぷらとおちんちんの先が揺れた。

 

そのことも恥ずかしくて、両手で包んで隠した。

 

「チャンミン」

 

「はい」

 

「どうして裸になっているんだ?」

 

「え...?」

 

「ここは外だぞ?

昼間で、店の中だ。

チャンミンは常識的な大人の男なんだろう?

それなのに、どうして素っ裸になってるんだ?」

 

「え...っと、それは...。

お兄さんが脱げって言ったから」

 

「へぇ...。

俺が『脱げ』と言ったからその通りにした、って言いたいんだな?」

 

「...は、はい」

 

「嫌なら『イヤだ』って言えばよかったじゃないか」

 

「...はい」

 

「言いなりになる必要はなかったんだぞ?」

 

「...はい」

 

「いいよ、服を着ろよ」

 

お兄さんは「仕方がないな」といった風にあきれ顔で微笑み、床に落ちた服を拾ってくれるた。

 

「でも...」

 

お兄さんは意地悪だ。

 

言いなりになった僕が、服を脱いだワケを知っているくせに。

 

お兄さんはニヤニヤ笑っていて

 

僕らはプレイのひとつとして、今みたいな言葉のやりとりを楽しんでいる。

 

お兄さんは僕を恥ずかしがらせるのが大好きだし、僕はその逆だ。

 

「『あそこ』に行こうか?」と、お兄さんは店の奥を顎で指した。

 

「...え」

 

僕の方へと歩み寄ると身をかがめ、その直後、僕は抱きかかえられていた。

 

 

 

(つづく)

 

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